(後編からの続きです)
念願だったあけぼのA寝台個室の旅が叶ったうれしさと、間もなくあけぼのが廃止されてしまうという寂しさ。
両方の思いが交錯した長い夜も終わり、あけぼのの旅は関東平野の北部で朝を迎えました。
 
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ひと月前に関東地方を襲った大雪も、もうすっかり消えてしまったようですね。列車は定刻で走っていました。
実は昨夜青森を15分程度遅れて出発したのですが、途中で遅れを回復したみたいです。
 
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窓ガラスには雪の塊が。青森を出発した時、雪が激しく降っていたのですが、その時に付着した雪でしょうか。
だとしたら、あけぼのの旅を共にしたパートナーということになりますね。塊は次第に小さくなっているようです。
ベッドに寝転びながらその様子を眺めていた私は、オー・ヘンリーの短編小説「最後の一葉」を思い出しました。
 「あの雪が全て消えたら、私も死ぬのね・・・」
まあそれは冗談ですが、この雪の塊が完全に消える頃、あけぼのの旅も終わると思うと悲しくなってきました。
 
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上りの最後の停車駅である大宮に到着。名残惜しいですが、そろそろ身支度を開始しなければなりません。
 
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洗面台の脇には靴磨きやエチケットブラシを用意。下車後、真っ直ぐ仕事に向かう人には便利だと思います。
 
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さて、本当はこの広々としたベッドで二度寝を楽しみたいところですが、私はここである作業に取りかかりました。
実はこの部屋には、もう1つの楽しみ方があるのです。それは何かといいますと・・・
 
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シーツ類を撤去してベッドのマットレスを持ち上げると、ソファーに転換できるのです。しかも1人でこの大きさ!
座面の位置がやや低いものの、ゆったりとしていて座り心地は抜群。車窓を眺めるにはソファーがお勧めです。
 
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では、朝食にしましょう。用意してきたのは、旅人には有名な青森名物、工藤パンのイギリストーストです!
A寝台個室(シングルデラックス)でイギリストーストを頬張れば、こんな私でも英国紳士になった気分に(笑)
 
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列車が終点上野に近づくと、進行方向左側に東京スカイツリーがビルの谷間に見え隠れするようになります。
「最後の一葉」ならぬ「最後の一雪」も、もうその形がなくなりかけていました。いよいよ別れる時が来たのです。
 
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約12時間半走り続けた寝台特急あけぼのが、最後の力を振り絞って上野駅のホームに滑り込んでいきます。
上野駅の到着シーン1つ取ってみても、新幹線の旅には決してない、感慨深いものがあけぼのにはあります。
 
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上野駅の13番線に降り立ちました。ターミナルとしての威厳は、あけぼの登場時から変わらないことでしょう。
 
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行き止まり式の上野のホーム。青森もまた行き止まり式なんですよね。それだけでも泣けてきてしまいそうです。
東京に暮らす東北出身の方々は、この上野駅のホームに立つとふるさとをよく思い出すのだそうです。
東京とふるさとは2本のレールで繋がっている。そして毎晩走るあけぼのが東京とふるさとを結んでいる。
故郷から遠く離れた都会に暮らす人であれば、そう思うだけでもかなり勇気づけられるのではないでしょうか。
 
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上野駅でもまた、秋田や青森と同様にあけぼのの引退を記念するさまざまなグッズが販売されていました。
あけぼの廃止後も札幌行きの北斗星とカシオペアが残るので、上野から夜汽車が消滅する訳ではありません。
でも、国鉄時代から運行を続ける正統派の寝台特急はこのあけぼのが唯一の存在。1つの歴史が終わります。
 
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下車後もホームに残り、あけぼのが車庫に引き上げていくのを見送って、長旅の余韻に浸っていたい。
しかし私はそれを止めました。むしろ引きとめる人の手を強引に振りほどくように、急ぎ足で立ち去ったのです。
未練が残るから?どうせ別れるなら、自分から別れを切り出した方が、次の一歩が踏み出せそうだから?
いや、それは違います。まあ、そういうことにしておいた方が格好がついたのかもしれませんけどね。
実を言うと、あけぼので6時58分に上野に着いた後、7時06分発の新幹線で新潟にトンボ返りしたからです。
そう、この日は月曜日。しかも、どうしても外せない大事な仕事があり、休暇も取得できなかったのです。
あけぼのが遅れて新幹線に間に合わなかったらどうしようって、結構ヒヤヒヤしていたんですよ。(←アホか?)
 
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あけぼののラストランとなる3月14日(金)は、仕事の都合で乗車することはできないことが分かっていた私。
これが自分にとっての最後のあけぼのの旅になりました。最後に実現したA寝台個室シングルデラックスの旅。
この部屋の扉を閉めた時、次の自分が始まる。そんな予感を胸に、あけぼのにサヨナラしました・・・(完)
 
【追記】
次の自分?もう終わってしまったことをいつまでも嘆くのではなく、前向きに生きていこうとする自分のこと!?
いや、それはきっと、今後多客期に運行される予定の臨時のあけぼのに乗車する自分でしょうね(笑)