晩秋のある日。夕暮れ迫る荒涼とした丘陵地にやって来た私は、目の前に広がる草藪をじっと見つめていました。

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ススキやセイタカアワダチソウなどの秋草が好き放題に伸びています。人が踏み分けた跡なんて一切ありません。
これを海原に例えるのは大げさかもしれませんが、私は強い意思を抱き、藪の海をたらいで漕ぎ出したのでした。

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やっぱりこれはかなり歩きづらいな(←たらいなんか担いでいるからでしょ)、と思いながらも力強く前進。
この藪のどこかにお宝があることは間違いないのです。あれっ、この先の斜面が濡れているように見えるけど?

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うわ~、これですよこれ。藪の中に巧みに隠れていたお宝を見つけ出すことに成功しました。もう大興奮です。

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地面から突き出すこの物体はケーシング管で、そこから温湯が静かに自噴しているのです。つまり源泉井戸です。
湯の温度を測定すると、29.8℃と低いものの温泉法の定義には到達。立派な天然温泉ということになります。

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現場は緩やかな斜面になっています。斜面を低い方へ進むと、排水用と思われるパイプも確認できました。
それにしても、何でこんな場所に源泉井戸があるんでしょうね。掘削されたものの低温のため放棄されたのかな?

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謎はさておき、無事に発見できたということで、私は次の作業に着手。一緒に藪を漕いだ船を地に下ろしました。
しかし、井戸から溢れた湯で現場はびしょびしょ。ぬかるんでいて、なかなか思うように作業が進みません。

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しかも、ケーシング管の切れ込み部分から湯が流れ出しているのですが、湯口側は急斜面でたらい設置には不向き。
持参した塩ビパイプ&エルボのセットを用いても、うまくたらいまで湯を導くことは難しそうでした。どうする?

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もちろん、私はひるんだりしません。「短いホース!」こんな時、自在に小回りの利くホースは大変便利なんです。

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ケーシング管の中の水面は、たらいよりも高い位置にあるので、サイフォンの原理で楽々導水可能。やったね!

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静かに、しかし着実に、たらいの水面が高くなっていきます。その様子を私は一日千秋の思いで見つめました。

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さあ、遂にその時が来ました。まだ空が明るいうちに湯が溜まってくれて本当によかったです。では、いきます!

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いや~、やっぱりこういうのって本当に楽しいですね。なんてったってこのロケーションが最高ですもの。
いっそ日没までゆっくりしていこうと思ったのですが、秋でも元気な藪蚊の集団が襲来し、血吸われ放題に・・・