(前編からの続きです)
閉館日間際に滑り込みセーフで白根温泉関根旅館にやって来た私。幸運にも到着時は私しか客がいませんでした。

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脱衣所もガランとしていました。独占できてうれしかったのは確かですが、少し寂しい気持ちにもなりました。

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脱衣所の壁には廃業のお知らせと御礼の掲示が。オール手書きで丁寧な文字で書かれており、心に沁みました。
それにしても、書いたのはおそらく女将さんだと思うのですが、レイアウトもばっちりでデザイン能力が高い!

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さあ、万感の思いで浴室へ。いつもと同じ佇まいでほっとする思いと、最後だとは認めたくない思いが交差します。

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いや、いつもとは違う点もありました。洗い場のシャワーはボイラーの故障により、お湯が出ないとのこと。
3月14日(金)~16日(日)の臨時休業日、17日(月)の定休日で直すことに成功したと思ったのですが。

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でもね、私は全然気になりませんでした。湯船にはあの美しい色の名湯が熱々の状態で張ってあったからです。

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手桶に湯を汲んでみるとこのとおり。手桶が白いということもあり、その美しさがいっそう引き立っていました。

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源泉名は「白根温泉」で、泉質はナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉(中性高張性冷鉱泉)、泉温は15℃です。
色付きから予想できると思いますが、モール泉特有の臭気があるほか、アンモニア臭も感知でき、抜群の泉質です。

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加温あり、循環あり、塩素系薬剤投入ありは仕方ありませんが、加水なし、入浴剤投入なしは立派ですよね。

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関根旅館の名物がこの源泉バルブ。湯が熱い場合は、このバルブを開いて生の冷鉱泉を投入するという仕組みです。

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実際にバルブを開くと、こんな感じで未加工の冷たい源泉がドバドバと出てきます。つまりかけ流しになるのです。

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いや~、この温泉が失われるのは本当に残念。枯渇したのなら諦めもつきますが、ご主人も女将さんも元気なのに。
じっくり浸かって、さあもう上がろうかと思ったものの、やっぱりもう少し入ろう。これを何度繰り返したことか。

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帰り際、女将さんとお話しさせていただき、どうぞ記念にお持ち帰りくださいと資料を分けていただきました。
特に、あの脱衣所に掲示してあったお知らせのカラーコピーは、もうこれを見るだけで泣けてきてしまいそうです。
大正6年に開湯し、昭和・平成・令和の時代を駆け抜けた伝統の100年温泉。今までありがとう、さようなら・・・