3月末で一旦落ち着いたかのように思われた温泉施設の廃業・休業ラッシュですが、その後も断続的に続いています。

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令和7年5月末で閉館すると知り、慌ててやって来たのは、山形県米沢市郊外の「小野川保養センター」です。
看板には「お湯治の宿」の枕詞が。湯治に「お」を付けるのは丁寧ですが、そこまでしなくてもという気もします。
側面の文字は消えかかっていてよく読めませんでしたが、どうやら「小野川指圧療法室」と書かれているようです。

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建物は平屋で、相当くたびれた感じがするのは否めません。この時点ですでにB級感満載でワクワクしてしました。

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入口に掲げられた看板を見て、私は少々戸惑ってしまいました。次のような客は遠慮してもらっているそうです。
「一、ご入浴だけを望まれる方、及び宴会、花札、マージャン等の行為を目的とされる方」
「一、お退屈になりがちなお一人様並に小学生以下のお子様方」(以下略)
ここでは静かな湯治生活を送ることが条件のようです。それはそれでいいのですが、入浴だけはダメなのですか?

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いや、かつてはそうだったのかもしれませんが、日帰り入浴も受け付けています。近くの吾妻荘が管理しています。

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日帰り入浴は午後1時から5時までで、料金は400円。小野川温泉にある共同浴場よりも少し高めの設定です。

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なお、この保養センターは基本的には無人で、管理人は常駐していません。料金はこのツボ(?)に入れるそうです。
性善説に基づいた料金の収受システムで心配にもなりますが、こんなところも素朴でいいのかもしれないですね。

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館内は激渋ですね。そこかしこに昭和のにおいがプンプン残っています。初めての訪問なのに懐かしく感じました。

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大浴場の手前には、家族風呂がありました。大浴場が清掃中の場合は、こちらの風呂に入ってもいいそうです。
私は午後1時ちょうどに入館したので、大浴場の清掃は当然終わっており、家族風呂は見学のみとなりました。

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長い廊下を歩いて、ようやく大浴場に到着しました。扉を開ければ脱衣所が丸見えの状態。目隠しはありません。

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脱衣所も簡素で渋いですねえ。いかにも静かな「お湯治」の宿といった佇まいで好感が持てました。では、浴場へ。

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おお、素晴らしい。ようやく対面することができ、感激しました。温泉マニアの評価が高いのも大いに頷けます。

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これが有名な湯口ですね。湯船の隅の底からニョキっと突き出したパイプから、アツアツな源泉が投入されます。
そのパイプは湯の成分で真っ白にコーティングされており、芸術作品のようにも思えました。見事な湯花です。

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湯口で温度を測定すると、何と58.6℃もありました。そのため、量を絞って少しずつ湯を投入しています。

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なお、源泉温度が高いため加水(井戸水)されているのは残念ですが、加温なし・循環ろ過なし・消毒なしは立派。
多くの一般客は温泉街の中心部にある共同浴場に向かうため、小野川温泉を静かに楽しむにはここは最適ですね。

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うわ~、湯が熱くて気持ちがいい。こんな素敵なお湯を静かに満喫できるなんて、退屈するはずがありませんよね。

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湯船からはザザーっと豪快に湯が流れ出し、床のタイルをきれいに洗い流します。見ていて飽きない光景でした。

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なお、洗い場は1つのみ。女湯の洗い場と近接しています。仕切りの曇りガラスが近すぎて、女性は困りそうです。

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閉館間際の訪問ということで混雑を覚悟していましたが、意外にも空いており、しばし独り占めして湯浴みを満喫。
できればここに宿泊して「お湯治」を体験してみたかったです。いつの日か復活してくれることを願って・・・