玄関のドアを開けてから浴室に至るまでの間、距離にすればほんのわずかなのですが、
目にするものがあまりにも強烈過ぎ!
正直な話、「これは・・・来てはいけないところに来てしまったか?」なんて思ったりもしましたが・・・(笑)
さて、いよいよ温泉との対面です。

大広間から外に出ると、左が女湯・右が男湯に分かれます。
そして、工事現場の足場のような踏み板を下りていきます。(このスロープはバリアフリーのためなのかな?)
軒先に作った風呂を簡単な屋根と囲いで覆っただけといった感じのシンプルで手作り感にあふれた佇まいです。
浴室への暖簾をくぐると・・・

「わ~」と思わず声に出してしまいましたが、それほど素晴らしい光景が待っていました。
湯船にはみかん色というか、赤茶けた源泉がコンコンと注がれ、洗面器もマットも温泉成分でべっとり。
(しかも、ご高齢者の利用が多いであろう男湯にハートの洗面器!くぅ~、泣けてきます・・・)

脱衣所と湯船の間には仕切りはありません。逸る心を抑えつつ、衣服を脱ぎ去りました。
(念のために言っておきますが、この写真は染物工場の様子を写したものではありません・・・笑)

源泉は成分がかなり濃いようで、注ぎ口の周囲には成分の結晶がびっちりと付着しています。

受付時にママさんから(←飲み屋じゃないって!)、もし熱かったら水を入れても構わないと言われました。
確かにかなり熱めです。でも、もちろん私は加水しませんよ。

おお~、高温ということもありますが、これはかなりガツンとくる温泉です。
色も美しいし、アブラと粘土と金属が混じったような独特の臭気も適度な刺激で鼻をくすぐります。
五感をすべて満足させるといっても決して過言ではないと思えるほど、素晴らしい温泉です。
そして、初めから意図されたものなのかどうかは分かりませんが、
この温泉を満喫できるような浴室の設計には大変感心してしまいました。一例を紹介すると、

まずは天井の屋根。半透明の波板を通して春の日差しがふんだんに降り注ぎます。
(真夏は大丈夫かな?)

仮止めのようなシートの隙間から、すがすがしい風が時折吹きこんで、火照った体をクールダウンしてくれます。
このシート、夏には外されるようですので、夏はさらに開放的になりますよね。(ただし、目の前は駐車場)
写真の左側に見えている人工のヤシの木が、きっとトロピカルな気分を盛り上げてくれることでしょう。

屋根と壁の隙間からは、剪定されることなく伸びきった、浴室の外の樹木の枝が入り込んでいます。
枝からは新芽が芽吹いていて、湯浴みをしながら春の訪れを実感できます。なかなか心憎い演出です。

そして、時々鳴り響く季節外れの風鈴が、まったりとした雰囲気に適度なアクセントを与えてくれるのです。
ところで先ほど「五感をすべて満足させる」と書きましたが、耳を満足させるのは源泉が湯船に注がれる音?
それともこの風鈴の音?と疑問に思った方もおられるかもしれません。
実は、両者ともある音にほとんどかき消されてしまいます。
その音とは・・・それはもちろんカラオケの熱唱!
あの大広間はほとんど防音対策がなされておらず、シルバーな方々の元気のいい歌声は漏れまくって、
この浴室にも大音量で響き渡るのです。しかも、選曲はご想像の通り。
温泉に浸かりながら、素人の歌う演歌を延々と聞く・・・はるばる旅に出たなあと感じずにはいられませんでした。
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