この9月末日をもって、青森県のある温泉宿が長い歴史に幕を下ろします。その優れた泉質はもちろんのこと、
昭和の佇まいを色濃く残す建物が魅力で、これまで多くの温泉ファンを魅了してきました。

その温泉宿とは、平川市(旧碇ヶ関村)の津軽湯の沢温泉郷の最奥に位置する「秋元温泉」です。
廃業の知らせを聞き、もう居ても立ってもいられなくなり、今回の遠征のメインの1つとして宿泊してきました。

この「秋元温泉」は、旅館部と湯治部から構成されています。どちらに泊まるか悩みましたが、
結局旅館部にしました。というのも、廃業する温泉宿に少しでも経済的に貢献できればと思ったからです。
旅館部は比較的新しいという印象を受けましたが、これには理由がありました。
実は1994年に、旅館部を全焼する火災があったのだそうです。湯治部は類焼を免れたのだとか。

建物は細長い造りで奥行きがあります。その奥が湯治部になります。ちょっとだけ見学させてもらいました。

これがその湯治部の部屋。おお、渋いですねえ。裸電球が天井から無骨に吊るされていて、いい雰囲気です。

そしてこちらは自炊用の台所。こちらも昭和の香りが漂っていて、郷愁の空間になっていました。
こんな宿で数日間、毎日温泉に浸かりながらのんびり過ごす・・・今の時代、最高の贅沢と言えるのでは?

さて、今回の宿泊は、青森県にお住いの赤REVさんにお付き合いいただきました。ありがとうございます。
素朴な料理を楽しみながら、ビールで乾杯。そして、部屋に戻ってからもひたすらビール!
就寝前に一度温泉に入ったのですが、その時撮った写真はブレまくりでございました(笑)

もちろん、翌朝も温泉に入りました。こちらが大浴場です。ちなみに、衝立には「女湯」の文字が・・・
まさか、二日酔いの勢いで、女湯に乱入したのかって?いえいえ、違います。

楕円形の湯船の中央に衝立があり、一方が女湯、もう一方が男湯となっています。つまり、混浴なんですよね。

写真の奥の左側が男性用の脱衣所、右側が女性用の脱衣所です。つまり、男性の場合、衣服を脱いだら、
女湯の脇を通過して男湯に向かうことになります。これは男も女も、お互いにちょっと恥ずかしいですよね。
昔はこんな衝立などなく、純粋な混浴だったそうです。まあ、いろいろあって衝立を後付けしたのでしょうが、
男女をきっちり分けるのなら、衝立は脱衣所からの進行方向に平行に設置すべきだったのでは?
でも、きっとこういうところがいいんですよね。

噂には聞いていましたが、かなりヘビーな温泉です。まず臭いが強烈!ゴムが焦げたような臭いがします。
また、コップが置いてあったので飲んでみましたが、これが激マズ。眠気も一気に吹っ飛びました。
(脱衣所の分析表では、「苦味酸味強硫化水素臭」との表記がありました)

でも、効能が豊かなことは事実。療養泉として、多くの信者に支持されてきたことは十分理解できました。

また、小浴場にも入ってみました。こちらは完全なる男女別。女性にはこちらがお勧めと言えるでしょう。
さて、入浴後、すっかり満足して身支度を始めた私でしたが、体の異変に気づきました。
手も足も爪が真っ黒なのです。赤REVさんは何ともありません。どうして自分だけ?
赤REVさん曰く、「悪い所が黒くなるんじゃないかな」とのこと。だとすると・・・
私は怖くて自分の腹を見ることができませんでした。(←もともと十分腹黒いってば)

朝の散歩では、源泉の見学にも行ってみました。湯量はこんなに豊富なのに廃業だなんて。
なお、こちらの源泉は動力揚湯だそうですので、廃業後はポンプも止められてしまうのでしょうね。
帰り際、女将さんとお話させていただきましたが、その時女将さんがボソッと発した言葉が忘れられません。
「主人が亡くなって、後継ぎもいないし、私も疲れてしまって・・・」
ありがとう、そして、さよなら秋元温泉・・・
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