近くだからいつでも行ける・・・そう思って、これまでずっと放置していた温泉があります。

見附市の郊外にある「名木の湯」です。坂本衛さんが“超秘湯”として著書の中で紹介している温泉の1つです。
そこへ向かう道は、すれ違い困難な未舗装の悪路と聞いていたので、途中に車を置き、歩いて向かいました。

てくてく歩きながら山の中へと進んでいくと、道の脇の斜面にはカタクリの花が咲き乱れていました。
車を運転しながらではゆっくりと眺める訳にはいかなかったでしょうから、やはり徒歩で正解でした。

本当にこの先に温泉なんてあるのだろうかと思い始めた頃、ようやくお目当ての建物が見えてきました。

おお、これは渋い外観ですねえ。屋根の煙突からは煙がたなびいていて、なかなかいい雰囲気です。
まるで『まんが日本昔ばなし』の世界にでも紛れ込んだかのような気分になってしまいました。

中からは賑やかな声が聞こえてきます。日曜日ということもあり、結構多くのお客さんが来ているようです。

入泉料は大人500円です。朝からやって来て、ここで1日のんびり過ごすのもいいかもしれませんね。

料金を支払い、浴室へ向かう途中、飲泉所がありました。源泉は低温で、浴室では加温して使用しています。

脱衣所に入って扉を閉めると、体に違和感を覚えました。部屋が少し傾いているようです。

そのため扉がきちんと閉まらなくなってしまい、その隙間を細長い三角形の板で塞ぐようにしたようです。
もしかしたら、平成16年の中越地震の際に、建物が少し傾いてしまったのかもしれませんね。

浴室は大変シンプルです。しかも、幸運なことに他には誰も入浴していませんでした。

泉質にこれといった特徴は感じられませんでしたが、わずかに色付きがあるようです。薄い褐色でしょうか。

正直言って、窓からの景色はイマイチですが、それでも秘湯感は十分にあると思いました。
見附や長岡の市街地からそう遠くない場所に、こんな温泉があるのは確かに意外かもしれませんね。

ここには露天風呂もあったはずなのですが、女将さんの話では今はもうないとのことでした。
中越地震と同じ平成16年の夏に新潟県を襲った集中豪雨の際、露天風呂が壊れてしまったのだそうです。

あの鉄パイプに囲まれた所に露天風呂があったようです。度重なる災害にも屈せず、営業を続ける超秘湯。
どうかいつまでも健在でいてほしい。そう願わずにはいられませんでした・・・
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