(前編からの続きです)
これまで私は、激渋でツッコミどころ満載のB級温泉を、尊敬の意を込めて“パラダイス”と呼んできました。
しかし、この星山温泉は、パラダイスというよりは“ユートピア”と表現した方がいいのではないかと思いました。

そう、この浴室の中に入った時、これぞB級温泉の極致だって確信したのです。とにかく感嘆のため息でした。
掘っ立て小屋にステンバスがポツンと1つ。これ以上、何が必要だというのでしょう。最高のお膳立てですよね。

浴室には2枚の絵が掲げられています。向かって右側の絵はどこかの時計台でしょうか。稚拙なタッチですが、
何か重要なメッセージが隠されているかのような気がしてくる、何とも不思議な魅力を放つ絵に見えました。

一方、向かって左側には富士山を描いたと思われる風景画が。海の向こうに富士山という構図なのですが、
なぜか、海が青・黄・白の3色に塗り分けられています。心理学者ならこの色使いをどう解釈するのでしょうね。
富士山についても、山頂だけでなく裾野全体が白くなっており、何か深い意味があるように思えてきます。

ご主人曰く、もし熱過ぎるようだったら、遠慮なく水を入れて湯の温度を下げてください、とのことでした。
壁には「水を大切にしよう」ってしっかり書いてあるんですけどね。栓を開くと加温前の鉱泉が出てきます。
これなら源泉かけ流しを贅沢に楽しむことができますよね。では、いよいよ入ってみることにしましょう。

うわ~、これは素晴らしい!ツルツルとしたその浴感は、まるで全身にローションを塗ったみたいなんですよ。
しかも、ほのかに硫化水素臭がして、口に含めば大変まろやかな味わいです。泉質も極上なんですね。
途中で見かけた唯一の看板に「つるつる」と書かれていたことをふと思い出しました。看板に偽りはありません。

時間の許す限りこの湯に浸かっていたいとも思いましたが、次のお客さんが来た気配を感じたので入浴終了。
興奮が冷めやらないこともあってか、体がかなり火照っていたので、こちらの休憩所でしばしクールダウンです。

そういえば、ネット上のレポートには、休憩室が存在するとの情報があったはずです。ここがその休憩室かな?

杉木立の奥へと伸びるこの建物の壁面の青いトタン板には、何やら白い文字がびっしりと書かれています。

さらに、閉ざされた入口の扉には日の丸が。何だか私にはこの地がパワースポットのように思えてきました。
ソファーや座卓が雑然と置かれているのが気になります。この中に入ってみてもいいものなのでしょうか。

思い切って扉を開いた私は、再び息を呑み込んでしまいました。どうやら禁断の扉を開けてしまったようです。

その後、ご主人にこの温泉の経緯を伺うことができました。かつてはアスレチックやローラースケート場があり、
間違いなく「スポーツランド」だったのだそうです。きっと元気な子ども達の声がこだましていたのでしょうね。
ご主人からはこのような補助券をもらいました。そこには創立者(哲理姓名鑑定士)の名も記されていました。
券面からは、これからもこの地で頑張っていくというご主人の強い意志が感じられます。うなづいた私でした・・・
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