昔ながらの夜行列車が次々に姿を消していくように、古い温泉旅館がまた1つその歴史に終止符を打ちます。
廃業の前に一度訪問してみたいという思いが募り、お盆休みを利用してさよなら入浴に出かけることにしました。

その旅館とは、秋田県大館市にある日景温泉です。残念ながら今月末をもって営業を終了してしまうのです。
国道7号沿いにあり、目と鼻の先を何度も通過しておきながら、今まで一度も入ったことはありませんでした。
というのも、国道脇に立つこの看板がとても立派なので、自分には敷居が高いのかなって思っていたのです。

しかし、その一方で、国道の反対側にあるバス停の小屋は何ともB級感に溢れていますよね。いい佇まいです。
ちなみに幹線国道でありながら、バスは1日たったの2本!これではバスに乗って来る客は極少でしょうね。

国道7号から細い枝道に入り、道なりにしばらく進んでいくと、やがてお目当ての日景温泉が見えてきました。

これはまた風情がありますねえ。赤いトタン屋根が印象的な木造の建物は重厚感があり、伝統を感じさせます。

この温泉の開湯は明治26年。ちなみにその温泉名は地名ではなく、日景家という経営者の姓に由来します。
日景温泉のフェイスブックによれば、閉館の最大の理由は金属を腐食させる源泉と建物の老朽化なのだとか。

ただし、フロントにも建物の入口にも今月末で閉館というお知らせの掲示物は一枚も見当たりませんでした。

日帰り入浴は500円になります。受付で料金を支払うと、どうぞこちらへと大浴場・露天風呂を案内されました。
通常日帰り入浴というと、この大浴場と露天風呂での入浴を指すようです。まずはこちらに行ってみましょう。

建物の内部もまた実にレトロな佇まいです。このまま民俗資料館や博物館として活用できそうな雰囲気でした。

大浴場への途中にある休憩室らしき部屋には埃にまみれた古ぼけた卓球台が。こんな光景が郷愁を誘います。

長い廊下を歩いてようやく大浴場に辿り着きました。のげゆかひ?この暖簾、文字の配置がユニークですよね。

わ~、これは素晴らしい。雑誌やネットで何度も見たことがある光景ですが、実際に見ると感動が違いますね。
L字型の木枠の湯船には青白く濁った硫黄泉がなみなみと満たされており、その様は神秘的ですらありました。

また、温泉ファンの評価が高いのはこの独特の形状をした湯口です。これを一度見てみたいと思っていました。

当然源泉かけ流しで、湯船の縁からオーバーフローした湯がザーザーと床を洗い流します。美しいですねえ。

露天風呂は男湯と女湯の中間にあって男女兼用。つまり混浴です。こちらにも青白い湯が注がれていました。

なお、露天風呂は敷地内でボコボコと自噴した源泉がそのまま湯船に流れ込む仕組みになっていました。
これはなかなか野趣に富んでいていい方法ですね。これももた温泉ファンを唸らせる理由なのだと思います。

露天風呂は温めで長湯するのに都合がいいのですが、季節がらアブの襲撃を回避することができません。
結局露天風呂は早々に退散し、大浴場でのんびりすることに決めたのでした。

大浴場の湯船も内湯にしては温度が温めなので、真夏の今でも長湯を存分に楽しむことができると思います。
もっとも、私は熱い湯が大好きなので、この切り株風の湯口の近くを占拠してなるべく熱い状態を堪能しました。

こんなに素晴らしい温泉なのに、もう入れなくなってしまうなんて。いつしか感傷的になってしまった私でした・・・
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