今回の東北遠征のもう1つの目的は、やはり今月で廃業してしまう青森県の温泉旅館を訪ねることでした。

平川市の温川山荘です。弘前の市街地から黒石を通って十和田湖方面に抜ける国道102号沿いにあります。
駐車場は国道脇にあり、そこから吊り橋を歩いて渡って宿に向かいます。このアプローチがいいですよね。

この吊り橋が結構グラグラするのでちょっとしたスリルを味わえます。カップルで訪れればなお効果的でしょう。

橋の下を流れているのは南八甲田山系を水源とする浅瀬石川です。とても清らかな流れで気持ちがいいです。

建物が見えてきました。なかなか斬新なデザインの外観ですよね。でも、周囲の風景にはよく調和しています。

ここは日本秘湯を守る会の会員宿として人気がありましたが、残念ながら8月20日をもって廃業することに。
この“負の連鎖”といいますか、東北地方に吹き荒れる廃業の嵐はどうにかならないものなのでしょうか。
ちなみに、大館市の日景温泉と同様、フロントには廃業を知らせる紙などは一切掲示されていませんでした。

入浴料として500円を支払い、まずは露天風呂に向かうことにしました。この露天風呂の評判が高いのです。

サンダルを履いて急な階段を下りていきます。一段一段下りるごとに、川のせせらぎが大きくなっていきました。

おお、これはまた噂に違わずいい雰囲気の露天風呂ですねえ。雑誌の特集でよく目にした有名な光景です。
私と同様、廃業を知った温泉ファンが続々と訪れているはずなのですが、この時は幸運にも貸切状態でした。

湯船には2本のパイプ(うち左側の1本は丸太に内蔵)によって激熱な源泉が常時コンコンと注がれています。
一方、真ん中の黒いホースからは冷水が出ていました。きっと、近くの沢から引いてきているのでしょう。

こちらの宿では基本的に源泉かけ流しなのですが、夏の今の時季は加水しているとのこと。仕方ありませんね。

これは湯船の側から見た脱衣所です。簡素ではありますが、なかなか風情があり秘湯のムード満点ですよね。

また、湯船の直上にはランプが。日が暮れて、ランプがぼんやり灯った状態での入浴もまた格別でしょうね。

あ~、至福の時間とはこのことです。これは本当に生き返りますね。瞑想に耽るかのように湯に浸かりました。

ただ、ちょっとだけ残念だったのは、対岸の国道を行きかう車やバイクの走行音が意外にも響き渡ることです。
それ(+アブ)さえなければ、日常の喧騒を一切忘れ、心身ともにリラックスすることができるんですけどね。

湯船には木々の緑が覆いかぶさり日傘の役割を果たしてくれています。木漏れ日がまた目にも肌にも優しくて。
紅葉の時季ならば、これまた素晴らしい湯浴みになることは間違いないのですが、もうそれは叶いません。

最終日が迫っているというのに派手なセレモニーなど催されることもなく、ただ静かに消えていく秘湯の宿。
ありのままの自分を全うして使命を終えたいと、まるでこの宿自身が願っているかのように・・・
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