青森県南津軽郡の田舎館村ってご存知ですか。今では田んぼアートですっかり有名になりましたよね。
その田舎館村に素晴らしい温泉があると知って訪ねてみました。この温泉にもまだ入ったことがなかったので。
役場のすぐ近くにあるのですが、ちょっと分かりづらいです。というのも、温泉施設には見えない外観なのです。
その施設の名は「老人憩の家」。昭和48年1月の竣工時に設置されたと思われる看板が朽ちかけています。
この看板だけではここに温泉があるとは分かりませんし、老人でなければ入れないと思ってしまいますよね。
しかし、1枚目の写真をよく見てみてください。外壁に温泉マークの描かれた巨大なボタンのような物体が。
この存在により、かろうじてここが温泉に入れる施設であることが分かるのでした。最初から手で書いたのか、
それとも色褪せたので上からなぞったのかは不明ですが、ペン書きの温泉マークにしびれてしまいました。
この施設は基本的には地元の高齢者(60歳以上)のためのものなのですが、村外・60歳未満でも入れます。
一般客の場合、「有料開放」の時間帯に限り利用することができるのです。これはありがたい方式ですよね。
初訪問だと中に入るのを一瞬ためらってしまいそうな雰囲気なのですが、受付の方はとても親切でした。
地元の方の津軽弁が軽快に飛び交い、ほのぼのとしていて、まさに憩の家そのものといった感じでしたね。
さあ、お目当ての浴室に辿り着きました。中を見なくても、きっと昭和レトロな空間であることは想像できました。
脱衣所で服を脱いでいる時、ある異変に気がつきました。陶器製の洗面台がカタカタと音を立て震えています。
まさかの地震発生?いや、そうではありません。その原因は浴室内に入ってすぐ判明することになります。
また、こんな面白い掲示が。かけ流しにご注意・・・???水を出しっぱなしにしないでくださいねってことかな。
案の定、浴室は飾り気の全くないシンプルな佇まいでしたが、私は興奮の境地を抑えられませんでした。
写真では分かりづらいと思うのですが、湯船から手前に向かって凄い量の湯が流れ出しているのです。
それもそのはず、とんでもない量の源泉が常時投入されているのです。湯口に手を当てると半端ない水圧!
かけ流しにご注意って、この豪快な源泉かけ流しの様に興奮し過ぎて失神しないでくださいね、ってことなの?
さらに興味深かったのは、浴槽の源泉パイプから枝分かれする細いパイプの先に蛇口が取り付けられていて、
そこでも源泉が出しっぱなしになっていたことです。水道水はあんなに節水を呼びかけているというのに。
飲泉用なのかもしれませんが、それにしては蛇口の位置が低過ぎます。う~ん、これはどういうことなのか。
こうでもして浴槽の湯口の水圧を下げないとパイプが破裂する可能性があるのだとしたら・・・恐ろし過ぎます。
湯船にダイブすると、浴室内で大洪水が発生。浴室入口の扉に向かう激流は、まるで水平な滝のようでした。
当然排水溝がパンク状態になるのですが、処理しきれない排水が脱衣所の洗面台の管を逆流するようです。
洗面台が小刻みに震えたのはそのためだと断定しました。これもまた凄い現象ですよね。
この温泉ですが、かなり温めで温度は38℃程度しかありません。真夏に汗を流すには最適な温泉と言えます。
しばらくじーっと浸かっていましたが、このまま深い眠りに落ちてしまいそうなくらい、本当に気持ちよかったです。
ちなみに脱衣所の黄ばんだ分析表には源泉の温度が47.6℃で、使用位置は44.0℃と記載されています。
これはどういうこと?地元の噂では、源泉に地下水が混合するようになり、近年泉温が低下傾向とのことです。
そのためこれに替わる新しい源泉を掘削するそうで、その証拠に敷地内には源泉櫓が立っていました。
となると、真夏にお勧めの怒涛の温湯は今季限りということかもしれません。これは一度は体験すべきです。
ここでもまた、夕焼けに染まる美しい岩木山を眺めることができました。センチな気分になってしまいましたね。
夜になると例の温泉マークが点灯します。闇に浮かび上がる手書きのマークが微笑ましくも少々不気味で・・・
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