(第4話からの続きです)
臨時寝台特急あけぼのは、午前8時57分に秋田駅に到着します。定期列車時代は午前6時38分着でした。

発車時刻は午前9時01分。この4分間の停車時間内に、私には手に入れねばならないものがありました。
もっとも今回の臨時運転を記念したあけぼのグッズの販売は一切ありません。では一体、何を手に入れようと?

それは駅弁です。あけぼのには食堂車も車内販売もないので、ここで逃すと青森まで空腹を我慢することに。
秋田駅では現在在来線ホームでの駅弁販売は行われていません。階段を上り、コンコース売店へ猛ダッシュ!
売店は8時から営業しているものの、目当ての駅弁の入荷は午前9時。つまり、1分間の綱渡りだったのです。

わ~、これは美味しそうです。購入したのはあけぼのファンにはおなじみの、大館花善の鶏めしなのですが、
これは期間限定で復刻販売されている「鶏樽めし」。昭和45~51年頃に販売されていたものなのだそうです。
中身はもちろん、掛け紙・お手拭・箸袋・容器の樽まで当時を忠実に再現。昭和テイストに満ち溢れています。
当然この樽は持ち帰ることが可能。いい旅の記念になります。今後の湯巡りにも役立つかもしれませんね(笑)

弁当に舌鼓を打ちながら窓の外を見上げれば、1月の北東北にしては珍しいのでは思えるような青空が。
新年早々ということもあり、今年は何かいいことがありそうな予感も。穏やかに過ごせればそれでいいのですが。

秋田の次は八郎潟に停車します。ここでの停車時間はわずか30秒。この先はどの駅も停車時間が短めです。

ただし、東能代に限っては4分間と長めに停車。ホームに降りて気分転換できるのもこの駅が最後になります。

酒田でも羽後本荘でも先頭機関車の写真を撮ったのですが、結局この東能代でもワンパターンの行動を。
どこで撮っても同じような写真になることは分かっているんですけどね。まあ、所詮ただの記録写真ですから。

列車が内陸部の鷹巣盆地に入る頃には青空は消え、灰色の空と白い雪原が果てしなく続く単調な世界に。
でもやっぱりこういう冬景色こそがあけぼのには似合うんですよね。再び郷愁の思いが強くなりました。

鷹ノ巣に到着。ホームの雪は東能代よりも多いですね。ところで写真の左手に見える建物に注目してください。
レンガでできた何ともアンティークな建物です。これって何だか分かりますか。「ランプ小屋」といいます。
明治時代の客車列車では灯油ランプを車内照明に使用していました。この小屋はその収納庫だったそうです。
今となってはこのランプ小屋は全国的にも貴重な存在。雪と調和する外観もまた、旅心をくすぐりますよね。

秋田県最後の駅・大館に到着。秋田新幹線にも東北新幹線にもアクセスが少々不便な大館の市民にとって、
乗り換えなしで上野に行き来できるあけぼのは便利な存在だったはずなのですが、今はどうしているのでしょう。

大館の先にある超有名お立ち台には、この日も多くの撮り鉄の方々があけぼの目当てに集結していました。
この日が本当に最後の撮影可能日になろうとは、果たしてどれだけの人が事前に分かっていたことでしょう。

青森県に入り、碇ヶ関に到着。ホームに人の姿はありません。小さな駅ですから当然と言えば当然なのですが。
でも、定期列車のラストランの時には、下りも上りも大勢の地元見物客でホームは大賑わいだったそうです。
実際、駅の待合室にはその時の様子が大きく紹介されています。それなのに臨時なったら見向きもされない。
この現実を一番冷静に受け止めていたのは、もしかするとあけぼの自身だったのかもしれません・・・(続く)
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