(第5話からの続きです)
雪に覆われた津軽の素朴な農村風景。寒さが苦手な私ですが、列車から雪景色を眺めるのは大好きです。
大鰐温泉駅に到着しました。窓の向こうには弘南鉄道大鰐線の電車が見えます。廃止が議論されていますが、
臨時寝台特急あけぼのは、終点青森に向けていよいよラストスパートに入りました。


今後どうなることでしょう。味わい深いローカル私鉄なだけに、1日でも長く活躍を続けてほしいものです。

弘前を過ぎると、雪原の向こうに雄大な岩木山の裾野が見えてきました。あけぼののハイライトシーンです。
残念ながら雲がかかって全貌を拝むことは叶いませんでしたが、今自分が津軽にいることを実感できました。

時計の針が12時を回ると、間もなく終点・青森に到着します。進行方向に青森ベイブリッジが見えてきました。
アルファベッドのAをかたどった斜張橋のケーブルが、約15時間にも及ぶ長い旅路のゴールテープのようです。

青森駅のホームに到着。多くの人が噂するように、今後もし臨時あけぼのが本当に運転されないのだとしたら、
上野発の夜行列車に乗って青森に降り立つことは永遠に不可能となります。何だか寂しいですよね・・・

あけぼのに使用されてきた客車の一部は、秋田県の小坂鉄道レールパークが購入すると報じられました。
このニュース自体、今後もうあけぼのは走らせないというJRからの暗黙のメッセージのようにも思えてきます。

結局途中駅で下車した人はごくわずかだったようで、乗客の大半は上野から青森まで乗り通したようです。
ブルートレインはもはや単なる移動手段なのではなく、乗ること自体が目的になってしまっているんですよね。

定期列車時代もそうだったのですが、先頭の赤い機関車は青森到着後、直ちに切り離し作業が行われます。

電源車のテールマーク周辺は塗装が剥がれてボロボロの状態。風雪に耐えて長年走り続けた証なのですが、
その痛々しい姿を見ていると気が滅入ってきてしまいそうでした。これ以上の延命はやはり難しいのでしょうね。

後方の上野寄りにはディーゼル機関車が連結されます。これに牽引されて車庫へと引き上げていくのです。

定期列車時代は毎日見られたこの儀式。多くのお客さんがホームに残ってその様子を見守ろうとしていました。

何度も出入りした青森駅のホームもこれが最後。アイドリング音を響かせながらも静かにその時を待ちます。

信号が青に変わり、列車がゆっくりと動き始めました。回送で出ていくその後姿がとても寂しそうに見えます。

昔ながらの開放式B寝台の旅。今後も急行はまなすや臨時北斗星で楽しめますが、その期間も残りわずか。
このベッドに揺られて旅したこと、きっと忘れないって誓ってみても、今の自分にはその自信がありません。
生きていくということは、過去の思い出を次々に忘れていくということだってことをよく分かっているからです。

ホームに佇んで、あけぼのが去っていく様子をじっと見守ることが精一杯だった私でした・・・(終わり)
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