(第4話からの続きです)
日付が変わって最初の停車駅となる函館が近づくと、夜間のため休止されていた車内放送が再開されます。
夜汽車に乗ったことがある方は分かると思うのですが、車掌さんによるおはようの挨拶がまたいいんですよね。
「ご乗車の皆様、おはようございます。本日は8月10日月曜日、列車はただ今定刻で運転しております・・・」

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そう、挨拶に日付のアナウンスが入るのです。これを聞くと、列車の中で朝を迎えたんだなって実感しますね。
函館の駅構内では、函館から北斗星を牽引する重連の青い機関車がスタンバイしているのが見えました。

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広い駅構内には特急スーパー白鳥などの車両が停泊しています。この特急も来春3月までの運転となります。
奥に見えるのは函館山ですが、相変わらず山頂付近は厚いグレーの雲に覆われてしまっていました。

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函館に到着しました。ここでは機関車の付け替え作業が行われる関係で、実に14分間も停車します。
本州内では各駅の停車時間が短過ぎてホームに降りることはできなかったので、貴重な休憩時間となります。
7時前ですのでまだ眠っている人も多くいたと思われますが、ホームに出て気分転換する人も結構いました。

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青森から函館まで牽引してくれたのは赤いED79形という電気機関車です。赤い機関車もカッコいいですよね。
なおこの機関車は津軽海峡線用であり、北海道新幹線開業によって姿を消すことがほぼ確実視されています。

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こちらの機関車は昭和62年の改造により誕生しましたが、そのベースとなった機関車の製造年は昭和50年!
多湿な青函トンネル、潮風の吹く海辺の線路、冬季の厳寒な気候という過酷な環境を走り続けてきた老兵。
その疲れ果てた車体を眺めると、もう休ませてあげてもいいのかな、なんて余計な心配をしてしまいそうです。

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一方、札幌寄りには先ほどから重連で待機していたDD51形という青いディーゼル機関車が連結されました。
ホームが短い、というよりは北斗星の編成が長いので、機関車を正面から撮影することはできませんでした。
機関車の鼻がホームの末端ギリギリの位置になってしまうのです。さすがは長大なブルートレインです。

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函館では記念切符が販売されているので、改札を抜けてみどりの窓口まで買いに行こうと思ったのですが、
私がたどり着いた時にはもうすでに長蛇の列ができていました。やはり同じことを考える人はいるものですね。
このままでは乗り遅れる可能性があったので、潔くここは断念し、再び自分の車両に戻ることにしたのでした。

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函館駅を出発です。夏休み中ということもあって、ホームには多くの子どもたちが見物に来ていました。
ところで君たち、朝から盛大に見送ってくれるのはいいのだけれど、ラジオ体操にはちゃんと行ったのかい?

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函館を出て時計が7時を回ると食堂車が営業を再開し、朝食の提供が始まるのですが、私は最初からパス。
というのも、函館到着前からもうすでに長い列ができていたのです。何十分も待つかと思うと気が引けました。
昨日買ったお弁当が手つかずですので、これを朝食にしたいと思います。わ~、なかなか豪勢ですねえ。
内容は「フォアグラとホタテのサラダ トリュフのヴィネグレットソース、牛肉のブレゼ赤ワイン煮込み」などなど。
北海道の形をした「北海道大納言小豆とチョコレートのデザート」もユニークで、とても美味しかったです。

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やがて列車は大沼国定公園へと入りました。あいにくの曇天ですが、朝の大沼・小沼がとても幻想的でした。

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函館で再度進行方向が逆になったので、私の乗車している11号車は再び先頭となって走行していきます。
この付近では、駒ケ岳をバックに線路がカーブを描くので眺めがいいのですが、あいにく駒ケ岳には雲が。

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森に到着しました。向かい側のホームにはJR北海道カラーの1両編成のディーゼルカーが停まっています。
あの普通列車のボックスシートを独占してのんびりと旅するのも悪くありません。いつかきっとまた来よう。

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森を出ると、列車はこの先東室蘭まで内浦湾(噴火湾)に沿って進んでいきます。濃霧もまた旅のアクセント。
海と空の境がよく分からない風景を眺めていると、私は漂泊の思いがいっそう強くなっていくのでした・・・(続く)