(第6話からの続きです)
苫小牧から札幌までは約70キロ。残り1時間となり、北斗星の長い旅も遂にフィナーレが近づいてきました。

苫小牧からはJR千歳線へ。これまで走行してきたJR室蘭本線は勇払平野を直進し、岩見沢へと向かいます。

やがて広大なトウモロコシ畑が見えてきました。いかにも北海道らしい、雄大で見応えのある光景ですよね。
私は思わず去年の朝ドラ『マッサン』の主題歌を口ずさみたくなってしまいました。(←あれは「麦の唄」でしょ)

最後の停車駅である南千歳に到着。定刻より数分遅れています。向こう側のホームに見えている特急は、
スーパーとかち3号帯広行きです。北斗星からの乗り換え客を律儀に待っていてくれたのでした。

豊平川を渡れば終点札幌はもうすぐそこです。最後の案内放送が流れ、乗客が一斉に下車準備を始めました。
ああ、旅が終わってしまう。廃止間際に完乗できたという達成感よりも、やはり私は寂しさが募ってしまいました。

始まりがあれば終わりがある。もうとっくに分かっていたはずなのに、現実を受け入れたくない自分がいました。
札幌到着後、回送として車庫に入るので急かされるように下車しましたが、心を車内に置き忘れた感じです。

札幌駅のホームを一歩一歩踏みしめるように歩きながら、北斗星の長い編成をじっくりと眺めてみました。
確かに老朽化は否めませんが、その輝きは決して失われてはいません。これがブルートレインなのです。

先頭の機関車の場所へ向かうと、やはり人だかりが出来ていました。写真を撮影するために私も列に並びます。

ここでも機関車がホームの先端ギリギリの位置に停車しているため、こんな写真を撮るのが精一杯でした。

このディーゼル機関車の側面には流星のマークがあります。夜行列車の牽引機らしい風格を感じさせますね。

札幌駅では大型硬券タイプの記念入場券を販売しています。北斗星のイラスト入りで、いい記念になります。
券面にも表記されているように、札幌に到着した私は、北斗星にありがとうという気持ちでいっぱいでした。

残念ながら今回は個室ではありませんでしたが、最後のブルートレインの旅を存分に楽しむことができました。
1,000キロ以上も揺られてきたのですから、開放式B寝台の簡素なベッドでさえ、いとおしく感じてしまいます。

私は再び最後尾へと移動し、ここで静かに北斗星を見送ることにしました。テールマークを目に焼き付けます。

列車が動き始めました。イラストの北斗七星がゆっくりと遠ざかっていきます。宇宙の彼方に消え去るように・・・
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