(第9話からの続きです)
結局一睡もしないまま、はまなすの最後の力走に身を委ねていた私。お別れの時が徐々に近づいてきました。

苫小牧に到着しました。ここまで来ると、終点札幌まではあとわずかだなって実感するんですよね。寂しいです。

夜が明け始めました。身も心も凛と引き締まるような北の大地の朝の光景です。冷え込んで霜が降りています。

千歳に到着。確かこの駅だったと思うのですが、ホームの電光掲示板に一瞬「さよならはまなす」の文字が。
さりげないその演出が、いっそう惜別の思いを強くさせます。また朝が来ても、もうはまなすは来ないのです。

日が昇り始めました。乗客の多くが見つめます。皆黙っていましたが、思っていたことは多分同じだったのでは。

最後の停車駅となる新札幌に到着。いわゆる「厚別ワープ」は旅人には有名な話ですが、それももう過去形に。
(厚別ワープとは、急行はまなすを新札幌で下車し、JR函館本線の厚別駅までダッシュすることをいいます。
こうすると札幌発6時ちょうどの旭川行き普通列車に飛び乗ることができるのです。私は未経験ですけどね)

苗穂の車両基地が見えてきました。はまなすに使用されてきた車両は、苗穂工場で廃車解体となる模様です。
また、室蘭にある陣屋町という貨物駅でも廃車解体作業が行われるみたいですね。現実は本当に無情ですね。

車掌さんによる感動的なお別れアナウンスが行われた後、急行はまなすはとうとう終点札幌駅に到着しました。
北斗星やカシオペアに比べると乗車時間が圧倒的に短いので、心の準備ができないうちに降ろされる感じです。

札幌では多くの人がはまなすの到着を待っていました。機関車付近の人だかりに、下車した乗客が加わります。

今回はまなすのラストランに使用された車両は、経年劣化によりボロボロの状態のものが多かったのですが、
中には塗装し直されたばかりで、とてもピカピカな車両もありました。上の写真の車両、十分きれいですよね。

それもそのはず、この車両は去年の6月に検査を受け、塗装し直されたばかりなんですよ。この車両のように、
まだまだ使えるものについては、臨時列車用として少しでも長く保有・動態保存を続けてもらいたいものです。

はまなすを下車した人の多くは、そのままホームに残っているようです。回送列車の出発を見送るのでしょうね。
他人事のように書いているけれど、私も同じ行動を取ったんじゃないかって?本当はそうしたかったのですが・・・

実はこの後、仕事のために新潟にすぐ戻らねばなりません。急行はまなすが札幌駅に着いたのが6時07分。
新潟へは空路で帰るのですが、搭乗するのは新千歳空港発7時35分の便。もう空港に向かわなくては!
という訳で、はまなすラストランの余韻に浸る間もなく、札幌発6時15分の快速エアポートに駆け込み乗車。
札幌駅ホームの滞在時間は、何とたったの8分というバカバカしさです。我ながらよくやるよって思いましたね。

座り心地の悪い簡易リクライニングシートの一夜でしたが、昔ながらの座席夜行列車での旅を心に刻みました。
学生時代から何度も北海道への列車旅の際にお世話になった急行はまなすとも、これで本当にお別れです。
いろいろな記憶が走馬灯のように浮かんでは消えていくなかで、私は青森駅のディスプレイを思い出しました。

「最終便 お疲れさま、はまなす」 北の大地の鉄路に、いつか再びはまなすの花が咲くことを願って・・・(終わり)
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